待遇にも課題●東京新聞

東京新聞での、学童にかんする連載の第二回目。
舞台は横浜の学童クラブ。
我が学童と同様、苦しい懐事情が描かれている。
国や自治体による財政援助の抜本強化が不可欠です。

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どうなる学校 学童保育の現状(中) 
少ない人手、待遇にも課題
<2008年11月8日 東京新聞>

 放課後児童クラブ(学童保育)は、指導員に支えられている。だが、低収入で雇用も不安定だ。そもそも学童保育には法的な設置基準がなく、運営主体、施設、指導員の資格や待遇などに地域差があり、質の確保が課題になっている。 (井上圭子)

 「A君、机に乗らないで!」「(転んだB君に)大丈夫?」「Cちゃん、そろそろ帰りの支度してねー」
 子どもたちの歓声に交じって指導員の大きな声が響く。五年前、横浜市保土ケ谷区のビルの一室を保護者有志が借りて開設し、市の補助金を受けて運営している「ときわ学童クラブ」。近隣四小学校の一-五年生の児童五十八人を、常勤二人、非常勤四人の指導員が交代で世話をする。
 常勤の女性指導員(47)の一日はこうだ。午前中は清掃やおやつ作りなどの準備をし、日中、児童が学校で熱を出せば親の代わりに迎えにも行く。午後は下校してきた子どもの宿題を見て、おやつを食べさせ、希望者には指定の時刻に習い事や塾に送り出す。
 ほかの子どもを公園へ引率し遊ばせたり、室内遊びをさせて午後七時の保護者の迎えを待つ。夏休みなどはキャンプや遠足などの引率もする。
 一日八時間以上勤務で月給税込み二十万円。昇給はない。登録児童はこの五年間で倍増。目の回る忙しさに、ついため息も出る。
 「ニーズが高まっているのに職員が少ない。財政面の公的支援も不十分で、夫婦どちらかがきちんと稼げないと家計は苦しい。情熱だけでは続かない」
 国民生活センターの調査(昨年三月)によると、全国の学童保育の運営形態は、公立公営が43・7%で最も多い。次いで公立民営が37・5%、民立民営が18・8%。保育の質を保つため未就学児対象の保育園では保育士数が決められているが、学童保育の場合、民立民営の約三分の一では指導員人数の配置基準がない。
 指導員の待遇にも課題がある。常勤指導員の平均月給(手取り)は民立民営で十八万円、公立民営で約十七万円、公立公営約三十万円。常勤より人数が多い非常勤はそれぞれその三分の一程度だ。常勤の平均勤続年数も、公立公営より待遇が劣る公立民営・民立民営は六年ほどと短い。非常勤だと三年前後で、指導員が定着できない。
 常勤指導員は保育士や教員免許保持者、非常勤は主婦や定年退職者、学生などに打診するが、条件が折り合わず、なり手探しは困難を極めるという。
 財源確保も四苦八苦だ。前出の「ときわ学童クラブ」は同市から年間七百二十万円余の補助金が出るが、運営経費は年間約千五百万円かかる。
 運営する保護者会代表の田村わかなさんは「今の懐具合では指導員の待遇改善は限界。これでも公立公営の約三倍の月一万五千円の育成料を保護者から徴収し、大家に家賃を相場の半分にしてもらってギリギリ」と苦しい台所事情を話す。
 全国学童保育連絡協議会の真田祐事務局次長も「施設一カ所平均の運営経費は年間約一千万円。一方、国・市区町村からの補助金は約二百四十万円でとても足りない」と言う。
 さらに自治体にとって学童保育事業は法的には「努力義務」だ。真田さんは「財政難の自治体だと力を入れない。学童保育を必要な人が安心して利用できるようにするには、国の十分な財政措置が必要」と訴える。

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